蛇にピアス 著者:金原ひとみ (第27回すばる文学賞 第130回芥川龍之介賞) 映画化 主演 吉高由里子

あらすじ

生きている実感が無く、何となくの毎日を過ごし渋谷をふらつく主人公の19歳のルイ。
そんなある日、クラブで眉と唇にピアス、背中に龍の刺青に加え、舌が蛇の様に二手に分かれていた「スプリット・タン」を持つアマと名乗る男に声をかけられる。
そんなアマの影響を受けたのか、「スプリット・タン」に興味を持ったルイも舌にピアスを開ける。
その時感じた痛みに恍惚を感じるルイはその痛さに「生」を感じてハマっていく。

 ルイとアマは痛みによって「お互いの慰め」と「生」への実感に頼りながら社会の物陰で生きていく。

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映画「蛇にピアス」より


ある日アマが行方不明になり、捜索願いを提出しようとした時にルイはアマの本名を知らないことに気づく。
ここからストーリーはどんどん現実に戻されていく。
後日遺体で発見されたアマ。時現実をしっかりと生きる警察官が目の前に現れ、アマが自分より年下だったこと。アマにも親がいること等、現実を次々と認識させられる。

 現実を知らなくてもお互いが相手に頼り、依存しながら自分達を肯定出来るように世界の片隅で生きていた。

 社会の歪みで痛みに頼って生きる繊細な心を持つ登場人物達のストーリー。

「蛇にピアス」の映画化

ギャガ・コミュニケーションズの配給により2008年9月20日日本公開。
蛇にピアス

吉高由里子が熱演する「蛇にピアス」

監督:蜷川幸雄
脚本:宮脇卓也、蜷川幸雄
キャスト:ルイ:吉高由里子 アマ:高良健吾 シバ:ARATA マキ:あびる優 ユリ:ソニン

読書後の感想

現実を生きる警察が部屋に入ってきた瞬間の自分達の小ささと無力さ。
「痛み」によって生まれるとても細く今にも切れてしまいそうな「生きている感」に頼っている主人公達の様子が想像出来ました。

何も現代社会のルールや価値観が全てでは無く、この世には「繊細に」そして「弱く」生きている人もいる。
この時代に「生きにくい人」達の人間模様や生活が繊細に表現されており、少し救われる気持ちにもなりました。

印象に残った場面

ルイが捜索願を出そうにも、実はアマの本名を知らなかったことに気づいた。

これから読む方へ

現代を生きにくい方、ちょっとした事で心に傷付きやすい方には、きっと情景が思い浮かぶほど理解出来る本かと思います。
そうでない方も、こんな生き方があるんだなと分ってくれると、この記事を書いているアヒルは少し嬉しいです。

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蛇にピアス「映画より」

レビュー10選(大きく評価が分かれる様です)

  1. 今回初めて小説を読み、走り抜けるように一気に読んでしまいました。
    最初から最後まで退屈と感じる所が無く、最初は怠惰な主人公にあまり良い印象を持たなかったのですが、後半は何故か彼女がとても愛おしい存在に変わっていました。アマのことで動揺し、必死に打ちひしがれる主人公は少女のように純粋で、とても引き込まれました。
    凄い作家さんだなぁと思いました。
  2. 私がこの作品を手にしたのは、作者の金原ひとみさんがヤング・アダルト小説の翻訳で有名な金原瑞人氏の娘さんと知ったからだ。
    読んでみて、なかなか難しい作品だと感じた。ここには、スプリットタンなどの身体加工や、アブノーマルなセックスや、殺人や死への願望が描かれているが、正直にこの作品の良さを私はあまり理解できていないと思う。おそらく理性で理解しようとするよりも、感性で共感し、感じ取る作品なのだろう。
  3. グロテスクで刺激的な内容を期待して読んだのですが、本質はとてもシンプルで、読んだ後は意外に清清しい気持ちになりました。欲しいものが簡単に手に入ってしまう世界に住む人ならきっと共感できるはずです。
  4. 2年ぶりに改めて読んでみてもよくできた作品だなぁと思いました。
    性的描写、暴力、刺青、舌にピアスを開けるシーンなどありますが、好奇的でいやらしい感じやそのシーンのみに頼ったような作品では決してありません。それはあくまで演出の一場面です。しかし、やはり刺激が強いので慣れない方は控えた方がいいと思います。
    10代後半の方から大人まで幅広く読んで頂きたい一冊です。
  5. 芥川賞ということで購入してみたが、私に文学を理解する能力がないのか、それともまったくの駄作か・・・・主人公は自分の舌に割れ目を入れようとしたり、刺青を入れたり、自分の彼氏を殺したかもしれないと疑われる男と付き合ったり・・・
    そんな物語の中に現代の若者の叫びが含まれる文学が生まれない・・・・そんなふうにはまったく思わないが彼女のこの文章の中に文学あるようにはまったく思えない。
  6. 正直、読後オチがスッキリしない感覚に陥ったのだが、これについては解説の村上龍さんが説明しており、私も腑に落ちた。
    「わたしにはわからない。おそらく作者にもわからないし、ルイ本人にもわからない」
    そう、わからないながらも感じた表現、言葉こそが「嘘がない」といったことなのだ。村上龍さんは、「十九歳だからこそ書けた。嘘がない小説」だと述べている。
    そういった小説こそが優れた小説だと私も納得した。
    この小説から伝わるストレートな表現、言葉、欲望といったものこそが、この小説の本音ならではの良さだと感じた。
  7. 倫理の授業中に退屈しのぎで妄想する思考の中で蠢きそうな世界観でした。
    もう一度読むかは分かりませんが一度読んだらその情景など忘れることが出来ない、過去を振り返らず生きるけどたまに思い出して立ち止まってしまう感覚に陥りました。
    良いか悪いかを判断するのは難しいですが惹き付けられたという点においては秀でていた作品だと感じました。
  8. この話はあらすじで拒否していた。
    文章も表現も下手、でも単なるバイオレンス小説にはない歴史や社会への窓口がある。
    物語の作り自体はかなり上手いし面白い。
    この作品は20年後でも50年後でも色褪せない部分がある。
    珍しく老若男女に薦められる本物の作品に出会った。
  9. この本は感性の本だと思います。ロスコやニューマンの絵画ように、理論や理性で良し悪しの判断がつけられない、説明がなければいいか悪いか判断できない、そういうものだと思います。
  10. 作者と同じ年に生まれて、作者と同じく不登校だった経験がある者から言わせてもらうと半分共感して、半分は冷笑している自分がいる。
    平成に育った人間はどこかに引っかかるはずだ。

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